責任あるサプライ チェーン プロジェクト

機会を生み出す力: ガランバ国立公園の平和と保護を支援する

2022 年 8 月
国立公園内の未舗装の林道を歩く母親と子供
Photo by Esther Nsapu

ガランバ国立公園が広がるおよそ 5,000 平方キロメートルのサバンナは、多種多様な生物が生息する自然豊かな草原です。コンゴ民主共和国の北東部に位置するガランバはユネスコ世界遺産にも登録されており、急速に個体数を減らすゾウと、絶滅が危惧されるコルドファン キリンの世界最大の避難地となっています。一方、この国立公園の周辺は、相当の量の金が埋蔵されているエリアでもあります。魅力あふれる観光地になるはずの場所が、環境保護、経済開発、金の採掘など、さまざまな思惑の交錯により何十年も続く衝突の最前線となっているのです。

ガランバ近隣の町は、経済的な機会が限られているため、公園の自然資源に過度に依存してきました。ガランバの近くには、アフリカ最大の商業金鉱があります。そして、商業金鉱がある場所には、採掘で生計を立てる人々が集まります。周辺の手掘り採掘場の多くは、公園を取り囲む保護狩猟区内に点在しており、この地域固有の多様な生態系をさらなる危険にさらしているのです。

問題をさらに複雑にしているのが、この地域への近年の人口流入です。小さな村々の住民が、手掘り採掘が提供する就業機会と治安を求めてこの地域に流入し、限られた資源に対する負荷が増しているのです。さらにガランバは、公園の野生生物、スタッフ、隣接コミュニティを脅かす、象牙の密猟者や武装グループの対策にも苦慮しています。ガランバ公園の管理者は、これら数々の問題を解決するためのさらなる保護支援を必要としていました。

「キリン、マルミミゾウ、アフリカゾウ、チンパンジーなど、この地域の貴重な生物多様性を保存するには、公園とその周囲の狩猟区を保護することが不可欠です。」そう語るのは、ガランバのサステナブル デベロップメント ディレクターを務めるティエリー ノーマンド氏です。「私たちは、生態系の自然資源に対するコミュニティの依存を軽減するため、サステナブルな社会経済ソリューションを確立して持続的なコミュニティ開発を支援しようとしています。そこで Congo Power と提携することにしたのです。」

Google では、鉱物の責任ある調達のための取り組みの一環として、Google の製品に使用する鉱物資源の採掘が社会や環境に及ぼす影響を管理し、限りある資源を可能な限り再利用するために、積極的な取り組みを行っています。2018 年には非営利団体 GivePower と提携し、責任ある鉱物調達を支援する取り組みとして Google が進める Congo Power プログラムを拡張しました。このプログラムのベースになっているのが、「再生可能エネルギーへのアクセスが社会と経済のサステナブルな開発を促進する」というパラダイムです。民間のリソースと公的なリソースを献身的なパートナーとの協業に効果的に活用することで、影響力を拡大してエネルギーの公平性を高めてきました。

8 つのコミュニティでの発電プロジェクトが成功し、コンゴの 9,000 人以上の人々に電気を届けられるようになった後も、Google はこの取り組みを拡げる活動を継続し、2021 年にはガランバが必要としていた支援を提供することになりました。

エネルギーでコミュニティを活性化する

ガランバ国立公園の管理者の認識では、この地域の環境を保護するうえで最も大きな脅威は、持続可能な経済機会が不足していることでした。鉱物資源や象牙取引以外の分野で起業家精神を育むには、周辺のコミュニティがクリーンな電力を安定的に利用できるようにする必要があったのです。

ガランバはプロジェクトを始動するにあたり、コミュニティ ベースの太陽光発電デベロッパー Nuru と提携しました。

Google のソーシャル インパクト プログラムのマネージャー、バラカ カサリは次のように語ります。「このプロジェクトは、コミュニティに適した発電設備を、コスト効率が高く気候変動にも対応できる方法で提供するにはどうしたらよいかを検討することから始まりました。」

まずは、ガランバ国立公園と隣接する 2 つのコミュニティ、タドゥとファラジェの支援から始めることにしました。このプロジェクトで特に重視したのが、それぞれのコミュニティにおいてサステナブルなエネルギー インフラを確立することです。2021 年 6 月、Congo Power プログラムの支援を受けた Nuru は、タドゥに 122.6 キロワット ピーク、ファラジェに 215.1 キロワット ピークのソーラーハイブリッド ミニグリッドを敷設しました。

青い空と緑の木々に囲まれた野原に設置されたソーラー ミニグリッド
タドゥとファラジェのソーラー ミニグリッドは、コミュニティで暮らす 4,000 人近くの人々に電力を供給している。Photo by Esther Nsapu

Nuru の役割は、人々がエネルギーを利用できるようにするだけでなく、長期にわたって開発を持続できるようにインフラを構築、運用することです。

「多くの人が注目するのはエネルギー利用率です。」そう話すのは、Nuru の戦略・パートナーシップ担当シニア マネージャーのカイル ハミルトン氏です。「エネルギー利用率は重要ですが、指標としては十分ではありません。それは『はい』か『いいえ』でしか答えられないからです。エネルギーを利用できていますか?利用できていませんか?Nuru が行っているのは、長期的に安定した状態を作り出せる市場創出型のインフラを構築することです。ガランバのコミュニティにおいて、都市計画や起業を可能にし、新たな投資を促進できるような環境を創出するのです。」

プロジェクトの開始以来、ソーラー グリッドには次々と利用者が接続されました。現時点で 320 を超える企業、世帯、その他の社会的機関に電力が供給されており、直接受益者の総数は 3,800 人を超えています。

長期的な平和へのインセンティブ

Google は、この取り組みを支援する資金を提供するため、P-REC(Peace Renewable Energy Credits)を購入しました。Energy Peace Partners が開発した P-REC は、従来のエネルギー クレジットに代わる革新的な仕組みで、人道的な見地から集められた基金をもとに運営されています。企業は、この P-REC を平和のための再生可能エネルギー プロジェクトに資金を提供する端緒とし、世界の紛争地域における平和構築の取り組みを間接的に支援することができます。Google は、社会的および環境的な責任を果たすための継続的な取り組みの一環として、これまでに二度 P-REC を購入しています。

「P-REC はこれまでとは違います。」そう語るのは、Google で責任ある原料調達とインクルージョンを担当するプログラム マネージャー、アリッサ ニューマンです。「P-REC の効果は、Nuru のようなコンゴ企業にプロジェクト資金を提供することにとどまりません。エネルギー正義の実現、衝突の軽減、責任あるサプライ チェーンの強化を目指す民間企業の関心を高めることにもつながるのです。」

変化の機会を生み出す

タドゥ、ファラジェ、そしてその周辺の地域では、再生可能エネルギーを安定的に利用できるようになったことで、社会、経済、環境の成長につながる活気が生まれました。ソーラー ミニグリッドは、その敷設プロセスだけでも 114 人分のフルタイムの雇用を生み出し、その後もガランバの天然資源に依存しない新しい生活と経済機会を提供し続けています。

医療機関においても、安定的な電力を必要とする医療サービスを、月 1,200 人以上の患者に提供できるようになりました。夜間診療、ワクチン保管方法の改善、不可欠な医療設備の充実など、病院や診療所には常に明かりが灯り、地域社会の健康を維持できる体制が整ったのです。

Nuru が町中に設置した街灯は、コンゴの人々の、特に女性たちの行動の変化と経済活動の拡大につながりました。道は明るく照らされ、夜の安全性が向上しました。日沈には閉まっていた店が、営業時間を延ばせるようになりました。夜も安心して行動できるようになったことで、近所の人々と気軽に会えるようになり、皆で集まって協力し、絆の強い活発なコミュニティを構築する機会が生まれたのです。

街灯により見通しがきき、歩きやすくなった夜道を歩く人々
街灯が夜道を照らし、コミュニティの人々が安心して通行できるようになった。Photo by Esther Nsapu

各家庭でも、生活の質を根本的に改善するための電力が手に入るようになりました。照明、冷蔵庫、そして連絡手段として欠かせないスマートフォンの充電です。

さらに大きな変化ももたらされました。コミュニティがこれまで依存してきたディーゼルや石炭など、高価でクリーンでない電源をグリッドのクリーン エネルギーで置き換えたことで、1 年あたり最大 280 トンの二酸化炭素排出量を削減できる予定です。

「たくさんの機会があります。」ハミルトン氏は強調します。「エネルギーを利用できるようにすることで、これほどの創造力を解き放つことができるのです。人々が新しいことを始める場面に立ち会えるのは大きな喜びです。」

エネルギー正義を大規模に追求する

Congo Power との連携は進化し続けています。Google はパイロット プログラムから学んだことを継続的な活動に活かし、エネルギー正義とサステナビリティをさらに大きな規模へと発展させるべく取り組んでいます。最近、Nuru がタドゥとファラジェに導入したソーラー ミニグリッドが、アフリカのソーラー市場において特に優れた才能と実績を称える最高賞、Africa Solar Industry Association(AFSIA)のミニグリッド ソーラー プロジェクト オブ ザ イヤーを受賞しました。ガランバ国立公園は、Nuru の支援を得て周辺の他のコミュニティにも取り組みを拡げ、この成功をさらに積み重ねていくことでしょう。

エネルギーの公平性は、環境保護、経済開発、公衆衛生に計り知れない影響を及ぼします。Google はこの認識のもと、豊かで活気あふれるコミュニティの形成につながるプロジェクトを継続的に支援していきます。

壁の棚に菓子やはさみなどの日用品が並ぶ店で、赤い T シャツを着て冷蔵庫の蓋を開ける店員
サステナブルなエネルギーによって冷蔵が可能になり、店の営業時間の延長と品揃えの充実につながった。Photo by Esther Nsapu

Google のサービスは、人々に参加の扉を開いています。情報へのアクセスを増やし、新しいアイデアを生み出すためのインサイトを促進しています。Congo Power チームはこれからも、責任ある鉱物取引を支援するだけでなく、経済に参加する人々、特に経済を直接推進する仕事に長年携わる人々を支援していきます。

「これは単なる社会活動ではありません」とカサリは語ります。「現実に機会を生み出す活動なのです。」