環境プロジェクト

小さな変化によって大きな影響が広がることをインタラクティブなツールで理解する

2019 年 12 月
小さな変化によって大きな影響が広がることをインタラクティブなツールで理解する

シャワーの時間を短くする。お湯ではなく水で洗濯する。そういった日々の小さな選択が地球に大きな影響を与えるかもしれません。毎日のシャワーを 10 分から 5 分に短縮するだけで、年間およそ 18,250 リットルの水を節約できます。これは、一般的な浴槽およそ 90 杯分に相当します。

また、年間の洗濯回数を 300~390 回とした場合、お湯洗いから水洗いに切り替えるだけで、自動車を 15 時間運転した場合に相当する二酸化炭素排出量を削減できます。

これらは、地球のためにできることで紹介しているヒントのほんの一部です。Google が提供するこのインタラクティブ ツールでは、人が環境に及ぼす影響について理解し、それを軽減する簡単な方法を科学に基づいて学ぶことができます。環境への影響について楽しく学びながら、個人が実際の行動に移してサーキュラー エコノミーについてさまざまな発見ができるよう、カリフォルニア科学アカデミーおよびエレン マッカーサー財団と共同で開発したものです。

2018 年 9 月に公開された「地球のためにできること」で重視しているのが、「食料」、「水」、「エネルギー」、そして新しく追加された「物」の 4 つの柱です。「食料」を重視する理由は、農業が二酸化炭素排出量の 4 分の 1 を占めているからです1。「水」を重視する理由は、国連の予測では 2025 年までに、世界人口の 3 分の 2 が水不足による「水ストレス」を抱えながら生活することになるとされているためです2。「エネルギー」を重視する理由は、米国の温室効果ガスの総排出量の 27% を電力が占めているためです3。そして「物」を重視する理由は、非常に多くの物が消費され、使用され、無駄遣いされているからです。たとえば、たった 1 秒間に焼却または埋め立てによって処分されている衣類は、ゴミ収集用の大型トラック 1 台分にもなります。「物」の柱は、サイトを訪れた人々に、所有している物をできるだけ大切にし、長く使うことの重要性を伝えるためのものです。

「地球のためにできること」では、これら 4 つの柱についてゲーム感覚で学ぶことができ、事実を知り、ヒントを手に入れ、自分の行動を見直すことができます。たとえば、家庭の水漏れをなくすことで水道料金が最大 10% も節約できることを知り、自分で水漏れを直す方法を学ぶことができます。また、画面に表示された調理台、冷蔵庫、冷凍庫に食料を振り分けるゲームを通じて、それぞれの食料をどこに保管すると長持ちするかを学ぶこともできます。こうした体験を通じて、実際に習慣にしようと思える行動が何かしら見つかるはずです。

「水」の柱では、水を節約する方法についてわかりやすい説明と簡単なクイズで学ぶことができる。

「このツールは、使う人の興味をそそり、その瞬間を楽しめるように設計されていますが、ダッシュボードのような機能も追加して、自分はヒントをいくつ手に入れたか、これまでの行動をどう見直すことにしたかなどを追跡できるようにもなっています。」そう語るのは、Google の持続可能性への取り組みにおいてブランド マーケティング マネージャーを務めるティアラ バトルです。「地球のためにできること」は、2018 年 10 月にその月の Favorite Website Award を受賞しました。

Google カレンダーとの同期も可能で、新たに心に誓った行動を継続するためのリマインダーを設定することもできます。たとえば、料理の残り物を 3 日以内に食べる(または冷凍する)ことや、節水タイプのシャワーヘッドを購入することをリマインドできます。手に入れたヒントを印刷し、冷蔵庫やコルクボードに貼っておくのもよいでしょう。

すばらしい考えに触れる機会

カリフォルニア科学アカデミーは、「地球のためにできること」には欠かせない存在です。同団体のプログラム「Planet Vision」が、「地球のためにできること」の基盤となっているからです。「最も重要な領域として、食料、水、エネルギーを選択したのは、カリフォルニア科学アカデミーなんです。」バトルは言います。「彼らの情報の切り口、整理の仕方、単純明快なヒントにとても魅力を感じました。」

情報をわかりやすく伝えることが鍵だったと語るのは、カリフォルニア科学アカデミーのサステナビリティの責任者エリザベス バグリー氏です。彼女は言います。「私たちが作成したのは、たとえば「食べ物ごとに異なる二酸化炭素排出量」のような目に見えない概念を、実際に操作して実感できるアクティビティです。」

Google との連携は、影響の範囲を広げるのに役立ちました。「Google の協力を得られたことで、こうしたメッセージを世界中に届けられるようになりました。」バグリー氏は言います。「Google との連携を通じて、アクティビティを楽しく、簡単で、希望に満ちたものにすることで、世界的なムーブメントに参加して持続可能性のための解決策を探したい、と思ってもらえるようにしたかったのです。」

2019 年のアースデイに新たに追加された「物」の柱は、世界の先頭に立ってサーキュラー エコノミーを提唱しているエレン マッカーサー財団からの助言によるものです。

「『地球のためにできること』でわかったことのひとつは、有意義なパートナーシップがいかに大きな力につながるかということです。」そう語るのは、Google のブランド ストラテジスト、マイルズ ジョンソンです。「カリフォルニア科学アカデミーとエレン マッカーサー財団とのパートナーシップのおかげで、個人に向けたアドバイスの信用性と科学的な厳密性を高めることができました。また、複雑な話題を楽しく興味深く学べるようにする方法も学びました。」

エレン マッカーサー財団にとっては、Google との協力はサーキュラー エコノミーの原則を世界に広げるまたとない機会となりました。「リニア エコノミー(直線型経済)からサーキュラー エコノミーへの移行において、重要や役割を担っているのがグローバル企業です。Google とは、この移行を加速させるためにもう何年も協力してきています。」エレン マッカーサー財団でエンゲージメント リードを務めるゲイル ウィロウズ氏はそう語ります。「『地球のためにできること』のようなインタラクティブなデジタルツールは、世界中の人々にこうした考えに触れる機会を与えてくれます。」

エレン マッカーサー財団のおかげで、消費者が最も行動に移しやすい「物」として「ファッション」に焦点を当てることができた点も重要です。「ファッションは、サーキュラー エコノミーという解決策の中で、自分がどんな役割を担えるかに気付く絶好の題材です。」そう語るのは、エレン マッカーサー財団でプログラム マネージャーを務めるデール ウォーカー氏です。「アパレル業界は、どのようなビジネスモデルが急成長していて、日々どんな選択肢を顧客に提示しているかがわかりやすいからです。」

ほとんどの人は、古くなった洋服を繕ったり誰かにあげたりするほうが、捨ててしまうより環境に優しく責任ある選択だということは理解しています。人々がおそらく知らないのは、衣類の製造量が過去 15 年でほぼ 2 倍に増えていること、そしてそのほとんどが低品質であるために、衣類の寿命が半分ほどになっていることです。1 年間に製造されている衣類は 1 千億着を超えており、これは地球上のすべての人に毎年 14 着が行き渡る計算です。

「物」の柱では、衣類や家具などあらゆる物の修理、寄付、アップサイクルを通じてサーキュラー エコノミーに参加する方法を学ぶことができる。

「地球のためにできること」は、消費者一人ひとりが行動に移すことを後押しするために、Google が開発した初めてのサステナビリティ ツールのひとつです。「調査を通じてわかったことは、環境問題への意識は高いのに、情報に圧倒されている消費者が多いということです。彼らは、どこから始めたらいいかわからない状況なのです。」バトルは言います。「私たちは、そうした情報に焦点を当て、誰もがアクセスできるようにするという独自の立場にありました。そこで、人々が毎日起こせる小さな変化に注目し始めたのです。」

事実が変化を促す

「地球のためにできること」で紹介しているヒントの多くは直感的に理解できるものですが、中にはちょっと驚いてしまうようなヒントもあります。食器は手で洗うほうが環境に優しい気がしますが、実は食器洗浄機を使うことで消費エネルギーを半分に、使用する水を 3 分の 1 に減らすことができます。食料もそれぞれに適した場所に保管することで、これまで廃棄していた食料の 3 分の 2 を捨てずに済むようになります。たとえばトマトは、冷蔵庫に入れておくと味と食感が落ちるため、直射日光を避けて常温保存すると新鮮に保てます。

驚くような事実がヒントになる例は他にもあります。ファッションに関して言えば、まだ使える状態の衣類が毎年およそ 4,600 億ドル分も廃棄されています。「地球のためにできること」では、衣類を廃棄する代わりに、傷んだところを直して着ること、結婚式やパーティーのドレスはレンタルすること、着なくなった服は寄付するか、まったく新しいアイテムとしてアップサイクルすることなどを推奨しています。

その他に、今まで習慣にしていなかったことが不思議に思えるほど簡単なヒントもあります。「たとえば、見ていないときはテレビの電源を抜く、という習慣です。」とバトルは言います。「ほんの数秒しかかからない習慣ですが、1 年に換算すると自動車の運転 2 時間半に相当する二酸化炭素排出量を削減できます。」

「地球のためにできること」のサイトには、2019 年の終わりまでに、これまでの行動を変えるという誓いが 30 万件以上寄せられました。中でも多かったのは、「シャワーの時間を短くする」、「食器洗浄機を使う」、「残った食事を冷蔵庫に入れる」の 3 つでした。こうした誓いを送信するまではいかなくても、このサイトを訪れてくれた人は数十万人に上ります。

このツールの影響をさらに広げるため、数々の賞を受賞した非営利団体 Science Buddies と協力し、「地球のためにできること」で使用するレッスンプランを開発しています。一つは小学 5 年生向け、もう一つは小学 6 年生~中学 2 年生向けです。

「『地球のためにできること』を、世界中の学校で活用していただきたいと考えています。」そう語るのは、Google のブランド マーケティング マネージャー兼サステナビリティ マーケティング リードのジル プエンテです。「将来的には、教師や教育者の方々に教材として活用してもらえるようにしていく予定です。」

ものすごく小さなことが、とても大きな違いを生むことがあります。そしてすべては、ひとつの行動から始まります。

ドイツのベルリンで開催されたグリーンテック フェスティバル 2018 の Google ブースで「地球のためにできること」ツールを試す参加者のヒーロー画像。

1 “Sector Summary: Food, Agriculture, and Land Use(セクター概要: 食料、農業、土地利用)” Project Drawdown https://www.drawdown.org/sectors/food-agriculture-land-use

2 “International Decade for Action ‘Water for Life’ 2005–2015(国際行動の 10 年「命のための水」2005~2015)” 国際連合経済社会局(2016 年時点の情報) https://www.un.org/waterforlifedecade/scarcity.shtml

3 “Sources of Greenhouse Gas Emissions(温室効果ガスの排出源)” アメリカ合衆国環境保護庁(2019 年 8 月 19 日時点の情報) https://www.epa.gov/ghgemissions/sources-greenhouse-gas-emissions