責任あるサプライ チェーン プロジェクト

力を求めて立ち上がる: 3 人のコンゴ人アーティストが真実を語るドキュメンタリー映画 Ukweli

2021 年 1 月
友人たちと絵を描くコンゴ人アーティストのムガボを上空から撮った写真。

「今の世界の大量消費主義が、こんな文化を生み出したんです。結果を理解することなく、ひたすら消費する文化をね。芸術は、新しい方法で物事を見るための手段なんです。」 - ムガボ

コンゴ人アーティストのムガボが、地面にしゃがんで絵を描いています。風雨にさらされていた木板をキャンバスに、色の付いたガラス、パソコンのマザーボードなど、さまざまなモノを色鮮やかに描いていきます。

「かつてルムンバは言いました。『アフリカの物語は、西洋や東洋の国で綴られることはない。アフリカの物語は、アフリカ人によってアフリカで綴られることになるだろう。』」これは、ムガボがドキュメンタリーのナレーションで紹介してくれた、コンゴ独立の伝説の指導者パトリス ルムンバ氏の言葉です。「私たちは、彼が予測した時代に生きているんだと思います。」

錆びた飛行機に囲まれて、スラム詩人のリタがカメラに語りかけます。彼女の詩は、ストレートで情熱に溢れています。リタはこう言います。「恐怖は沈黙を生みます。沈黙は真実を隠してしまいます。高く声を上げて死ぬことができるなら、私は沈黙を拒否します。私が口にする女性たちの名において。」

コンゴのダンスグループ「ストリート ダンサーズ」のメンバーの 1 人が、埃っぽい道の上で群衆に囲まれて踊っています。喜びとエネルギーに溢れ、内面の力を沸き立たせるダンスです。

このダンサーは言います。「世界中のすべての国には、それぞれの物語があります。でも、真実の物語は私たち自身が語るべきです。さあ、こっちに来て何でも聞いてください。私の国について、間違った物語を作らないでほしい。この国はすばらしい国だから。」

ドキュメンタリー映画 <i>Ukweli</i> のポスター

これが、Google が制作した 23 分間のドキュメンタリー映画 Ukweli(真実)のメッセージです。Ukweli では、真実を語ることで歴史を取り戻そうとする 3 人のコンゴ人アーティストの生き様を垣間見ることができます。

彼らはコンゴ民主共和国(DRC)という国を、まったく新しい角度から見ることを教えてくれました。スマートフォン、ノートパソコン、その他の電子機器に使用される鉱物資源を巡って戦争と紛争に明け暮れ、性的暴力や貧困が蔓延する国、としてだけでなく、才能と情熱に溢れる人々が自らの手で未来を作ろうとしている国として。

ほとんどの人は、知らないうちにコンゴとつながっています。スマートフォンを持って出掛けるとき、私たちはコンゴのひと欠片を持ち歩いています。コンゴの鉱山で採掘された鉱物がなければ、ノートパソコンを使ってビデオ通話をすることもできません。Google はこれまで、Journey of Gold などの映画や Journey through Our Supply Chain のような AR(拡張現実)エクスペリエンスを制作してきました。Ukweli はこれらの続編のような位置づけで、責任ある鉱物資源調達の歴史と影響についてまったく新しい視点を提供するドキュメンタリー作品です。

Google は、DRC をはじめ各国の当局やパートナーと協力し、タングステン、錫、タンタル、金、コバルトなどの鉱物について責任ある調達を推進しています。

また、太陽光発電のマイクログリッドを敷設する Congo Power プログラムのように、コンゴの複数の地域で推進するさまざまな再生可能エネルギー プロジェクトを通じ、さらなる経済的機会の提供にも取り組んでいます。Google は、地域社会がうまく機能するための力を手に入れることが、コンゴの人々が個人としての力を取り戻し、今はまだ手にしていない機会を追求することにつながる最良の支援方法のひとつだと確信しています。

Ukweli のような映画がきっかけとなり、Google の供給パートナーだけでなく消費者や企業の皆様にも、資源の供給に携わる地域の人々に寄り添っていただけることを願っています。

体系的な変化を後押しするには、強力なネットワークが必要です。この映画の公開に合わせ、Panzi FoundationSentry ProjectAction KivuResponsible Minerals Initiativeとの共同キャンペーンを推進し、性的暴力の生存者が力を取り戻せるよう支援していきます。

生存者が力を取り戻せるよう支援する

「私は現状の連鎖を断ち切る。私はあなたの妹。私はあなたの母。私は、涙に暮れて自分の強さを無駄にしたりはしない。」 - リタ

コンゴ人スラム詩人リタのアップ写真
Ukweli の中でカメラに近づいて詩を朗読するコンゴ人スラム詩人のリタ

DRC はここ数十年で 2 つの戦争を経験し、戦後の長期にわたる紛争から抜け出せずにいます。全国に散らばる鉱業地域の多くでは、民兵組織が我が物顔で活動しています。民兵組織の最も破壊的な戦術のひとつが、レイプを戦争の武器として利用することです。

「レイプは、力と影響力を行使して恐怖を与える手段のひとつです。」そう語るのは、DRC において性的暴力の生存者のためのケアセンターを運営するパンジ財団において、戦略的パートナーシップおよびコミュニケーション担当ディレクターを務めるエミリー ワーン氏です。「戦争の武器としてのレイプは体系化されています。生存者を苦しめるだけのものではありません。地域全体の社会構造を破壊することを目的としているのです。」

状況を複雑にしているのは、DRC における経済的機会とエネルギー インフラの欠如です。「貧しくて燃料が不足している地域社会の様子を想像してみてください。女性は灯油やディーゼルをジェリカンに入れて配給所から自宅に運びます。途中でレイプに遭う危険を冒してでも、燃料を取りに行かなければならないのです。」そう語るのは、カリフォルニア大学バークレー校の教授でエネルギーが専門のダン カメン氏です。カメン教授は、DRC でのいくつかの再生エネルギー プロジェクトで Google に協力してくれています。

Ukweli では、ジェンダーに基づく暴力を明示的には取り上げていませんが、映画のメッセージがコンゴ人女性の地位向上であることは明白です。リタは映画の中でこう語っています。「私が詩を書くのは、女性は男性ができることなら何でもできると、コンゴだけでなく全世界に伝えるためです。」

この映画のメッセージは、女性が男性と平等な立場で活躍できる地域社会の実現を目指すパンジ財団の使命と完全に合致しています。「それは、あらゆる形の力を取り戻すことなのです。」ワーン氏は言います。「生存者が望むなら、擁護者になるためのツールを提供したい。自分で生計を立て、自らの将来を担う力を手にできるようにしたい。そして、司法制度をきちんと活用し、加害者だけでなく不処罰の風潮とも闘えるようにしたいのです。」

3 月 1 日の Ukweli のプレミア上映では、パンジ財団の創設者でありノーベル平和賞受賞者でもある医師のデニス ムクウェゲ氏が、自らが目の当たりにした、性暴力の生存者たちが未来を手に入れた力強い生き様について講演することになっています。また、パンジ財団は、受賞歴のある女優で、女性の権利の活動家でもあるタンディ・ニュートン氏が進行役を務める対談で、生存者が力を取り戻すことの意味と、グローバル市民として私たちがどのように支援していけるのかについて議論を重ねる予定です。

パンジ財団は、ホリスティック ヒーリング モデルの一部として社会経済的な再統合を提案しており、生存者が太陽光発電関連で起業するための新しい訓練プログラムを Google と共同で開発しています。たとえば、パンジ財団の関連施設に太陽光発電技術を導入するプログラムや、エンジニアリング、溶接、販売などの分野で、将来の就業につながるスキルを習得するトレーニング プログラムなどが用意されています。イジュヴィ島にあるパンジ リーガル クリニックはすでに、2019 年に敷設された太陽光発電マイクログリッドに接続されています。

太陽光発電での起業プログラムのおかげで、パンジ財団が生存者に提供する就業スキルのトレーニング機会が広がるだけでなく、その先を見据えた目標に向かって取り組むことができます。「彼女たちは実際、太陽光発電を通して、生存者たちをケアするパンジ財団の施設に、文字どおり力を与える方法を学んでいるのです。」とワーン氏は語ります。「もっと大事なことは、彼女たちが個々に持っている本質的な力を取り戻す過程において、新たに身につけた仕事のスキル、自信、独立心が心身の回復を促すツールとなることを願っています。」

市場へのアクセスにより地域社会を活性化する

「私は明日の物語のために闘っています。明日の物語は、私自身だからです。」 — 「ストリート ダンサーズ」のメンバー

1870 年代にベルギーがコンゴの植民地化を開始して以来、DRC の豊富な天然資源は紛争と暴力の根源となってきました。多くの地域がエネルギー インフラを欠いていて経済的競争力が低く、中央政府の脆弱さと広大な国土が今日の DRC の復興への道のりを複雑にしています。

Google は、DRC における Google の存在自体が鉱業地域に影響を及ぼすことを認識しており、地域に暮らす人々のためにも状況を改善する責任があると考えています。そのために Google ができるのは、紛争のない地域の信頼できる鉱山と協力し、資源を取り戻す機会を探ることです。

Google は 2018 年以来、Congo Power プログラムを通じて非営利団体、学術団体、テクノロジー企業と連携し、DRC 国内のイジュヴィ島、イトゥリ、ニャムラーレ、ワリカレなどの地域に再生可能エネルギー システムを敷設しています。システムの規模と能力はサイトごとに異なりますが、電力の供給によって地域を活性化するという目標は同じです。

「自分の経済状況や人権について語ることができなければ、自分の物語を語ることはできません。」カメン教授は言います。「コンゴの人々は、暴力という脅しによって沈黙を余儀なくされることが多いのです。」

「しかし、クリーン エネルギーを安全に供給できるようになれば、社会から取り残された地域の算段は、学校から地域のビジネスまであらゆる面で一変します。財政的に生き延びられる将来が目の前に開け、血の滲む思いで手に入れた金を民兵組織に払わなくても済むようになるのです。」

紛争地域に留まる

「ゴマは、独特の雰囲気、独特の美しさを持った街です。このような考え方を次の世代にはっきり示すことがとても重要なんです。どんな場所にも価値を見い出せるし、どんな場所にも独自の美しさがあるのです。」 - ムガボ

コンゴのダンスグループ「ストリート ダンサーズ」とそのパフォーマンスを見る人々の写真
群衆の前でパフォーマンスを披露するコンゴのダンスグループ「ストリート ダンサーズ」のメンバー Ukweli

Google がサプライ チェーンに関して下した企業としての最も重要な決断のひとつは、鉱物を「より安全な」鉱業国からのみ調達するのではなく、DRC に留まってこれらの地域のために闘うことでした。Google は、DRC からの調達を中止することで紛争鉱物の問題を解決できるわけではないことを理解しています。エレクトロニクスのサプライ チェーンのせいで深刻化した問題を、自分たちだけで解決するよう突き放すことになるだけです。

「我々は企業に対して、紛争地域において責任ある調達を追求することの重要性を説き続けています。」そう語るのは、責任ある企業同盟(RBI)の責任ある鉱物イニシアチブ(RMI)で標準と保証の責任者を務めるマリアナ スミルノヴァ氏です。RMI は、サプライ チェーンにおける資源調達の問題に取り組む Google のような会員企業を支援しており、今回の Ukweli 啓発キャンペーンのスポンサーにもなっています。

Google は、責任ある資源調達の実現と、鉱山からサプライ チェーン上流にかけての生産性向上を支援するため、現場での取り組みに積極的に関与していくことを戦略としています。スミルノヴァ氏が重視しているのが、鉱業地域の人々への敬意と謙虚さです。

「私たちは、鉱山を共同で運営する何人かのリーダーに会いました。女性も男性もいましたが、どのリーダーも彼らが働く土地とそこに眠る鉱物について明確なビジョンを持っていました。」とスミルノヴァ氏は言います。「現場の実態を理解するよう努め、現場の声に基づいて協調的に解決する方法を見つけることが不可欠なのです。多くの場合、解決策はすでにそこにあります。しかし、支援や拡充が必要な場合があるのです。また、なんらかの溝がある場合は、現地の利害関係者と協力して解決に取り組むことになります。RMI は常に、DRC をはじめとするリスクの高い地域において、こうした重要なパートナーとの関係構築に努めています。」

スミルノヴァ氏によれば、このダイナミクスを企業が理解する上で、Ukweli のようなプロジェクトが重要な役割を果たすといいます。「課題に共感をもって取り組めるようにすることが重要です。」彼女は言います。「RMI の年次総会でこの映画を先行上映したのですが、会員やパートナーから多くの質問が寄せられたんです。「力を手に入れ、自分で決める」というこの映画のメッセージに応えるにはどうしたらよいのかと。この映画は私に、資源調達元の国々の声を聞き、力を合わせて取り組むことの重要性を改めて認識させてくれました。」

消費者や企業の皆様もこの映画を通じて、鉱物取引が DRC の人々の利害にどう関わっているのかについて、関心を高めていただけることを願っております。

結局のところ Ukweli は、自ら声を上げようとする DRC という国について、私たちの理解を広げるためのムーブメントの一部なのです。

「私は、コンゴが私たちのものだと知っている人々のために闘います。わかりますか?」 — 「ストリートダンサーズ」のメンバー

今すぐ動画を見る

ムーブメントの一翼を担う

  • ソーシャル ネットワークで Ukweli の動画とキャンペーンを共有して、業界で議論を起こすための支援をお願いします。その際は、#raisethemic、#buildthepower、#ukwelitruth、#knowyourgold のハッシュタグを使用してください。
  • 以下の投稿テンプレートを使用して、組織または個人の Facebook、Instagram、Twitter、LinkedIn アカウントでコンテンツをスケジュール設定してください。

    • @[企業名] #knowyourgold は、コンゴの何千人もの鉱山労働者の安全で責任ある生活と、女性に対する性的暴力を減らす取り組みに寄与しています。皆様のご支援をお待ちしています。#buildthepower #ukwelitruth
    • @PanziUSA や @DenisMukwege 医師などの組織を支援して、性的暴力からの生存者が力を取り戻すための取り組みを支え、コンゴ主導のプログラムの認知度を高めましょう。#raisethemic #buildthepower #ukwelitruth
    • #ukwelitruth で、性的暴力の根絶を願うリタのようなアーティストを支援し、コンゴの人々の生活の向上を呼びかけましょう。#buildthepower

Google の取り組み

  • 紛争と関係のない精錬所と精製所からのみ資源調達を行います。多くの企業は、紛争鉱物の監査において紛争と無関係なことを証明されなかった精錬所からの資源調達を続けており、それがコンゴの搾取を永続させる要因となっています。
  • 現在、アフリカの大湖沼地域から資源を調達する企業は少なくなっています。また、Google は財政投資と公的支援により、鉱業地域における紛争と関係のない金の調達を支援し、コミュニティの人々に対して生計を立てる機会を創出します。支援できる組織の詳細: 責任ある鉱物取引のための官民連携(PPA)RMI
  • サプライチェーンのデュー デリジェンスに関する公開レポートの作成にあたり、改善、サポートを行います。RMI の零細・小規模採掘(ASM)の金資源ガイドまたは経済協力開発機構(OECD)のデュー デリジェンス ガイダンスで詳細を確認してください。
  • 年 1 回のレポートではなく、一年を通してデュー デリジェンスを実施します。デュー デリジェンスは継続的に取り組むことにより、徐々に低コストかつ容易に実施できるようになります。回数を重ねるごとに改善しているかどうか、皆様には注視していただきたいと考えております。